2014年09月20日

「美術館」(5)

休日、レンタルビデオで「レオナルド・ダ・ヴィンチの生涯」を借りて、見る。

秘密のカギを解く場面がその番組の中にあった。

彼は紙を裏返して透かして見ると、普通のイタリア語になるような文字を書くのが趣味だった。特技とでもいうか。


その画面を見て、僕はすぐにメモを裏返してみた。

なんだか、イタリア語に見えないでもない。

さっそく、若い研究家に電話して、そのことを告げた。

彼はすぐにイタリア語が使える友人の所へ飛んでいった。

休日にのんびりビデオを見るのも、まんざら捨てたものではないようだ。



「結局、金属2種類とその配合比率が決定打でしたね。」

若手研究家が実験結果を見ながら言った。

ダ・ヴィンチの絵からメモした「逆さ文字」はイタリア語で2組の数字を表していることが分かった。

1つの数字は原子番号、もう1つは配合の比率だろうということは容易に想像できた。

その金属と比率はコンピューターもはじき出していたということが後日分かるが、そこにたどり着くには2年以上かかったかもしれない。

合成された薬は副作用は今までの半分以下。効果は20倍以上に飛躍していた。

僕は早速、臨床試験に進むため、開発会議にかけた。

多分、来年の今ぐらいは、業界が驚愕するようなリウマチの薬ができることになるだろう。


「それにしても、不思議なのが・・・・・・」

「分かっている。俺も今、それを考えていたところだ。」


何故、レオナルド・ダ・ヴィンチは当時未知の金属を知っていたのか。

未知の金属を知っていただけでなく、「原子番号」まで知っていた。

そして、それがある種の有機化合物と合体されるとリウマチに良く効くことを何故、知っていたのか。

「タイムマシンでも発明していたんでしょうかね?」

「そんなことはないだろう」

しかし、そうとしか考えようがないことだ。

歴史上の天才たちは、時に、既成概念の積み重ねから導かれること以上の発見をしているような気がする。

彼ら・彼女らは「ひらめき」の瞬間に「未来」を覗いたのもかもしれない。


過去の思考は文字や伝承として連続して現在に繋がっているが、ひょっとして、未来の思考も現在と連続しているのではないだろうか。

神から許されたごく一部の人たちだけが、その未来の思考へワープできるのかも知れない。

意思、思考は既に決められた路線があり、僕たちはそこにのっかって科学を発展させている、ということは言えないか。

「しかし不思議ですね。」

「まったくだ」

「そうそう! このデザインの意味が分かったので、例の美術館の眼鏡の女性にも教えてやったんですよ。」

「なんて言ってた?」

「『そのデザインの意味が、たとえ分からなかったとしても、ダ・ヴィンチの絵の価値は変わりません』だそうです。」

またしても、彼女の言うとおりだった。

(終)

posted by ホーライ at 21:40| ミステリィ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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