2005年11月19日

ピアノ(1)

私の鍵盤を女が叩く。
力強く、時に軽やかに。

モーツァルトの曲が、昼下がりの町に流れる。

私はスイスで生まれ、日本にやってきた。
終戦間もない日本。
ピアノはまだまだ一般家庭にとって、高嶺の花の時代。

私は、神戸の高台で、モーツァルトを奏でる、平和なピアノだった。

譜面を風がめくり、花瓶の花が私の音に震え、女が一身に私を弾いている。
毎日2時間、私の体は鳴り響き、幸せな人生をピアノとして過ごしていた。



神戸での幸せな日々は、そう長く続かなかった。
神戸での2度目の冬。
朝になったら、家族が消えていた。




posted by ホーライ at 23:32| Comment(0) | TrackBack(0) | ロマンス | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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