2005年11月19日

ピアノ(2)

見知らぬ人が私を値踏みをして、「これは競売に出す」と言った。

もう、あの女の指に触れることも二度とないことが、ピアノである私にもわかった。

私は売られていく。

そこにも平和な時間が流れていればいいのだけれど。





タバコの煙が立ちこもるジャズ・バー。

隣でベースが鳴り、向こうでドラムが響く。

銀のドレスを着た女が歌を歌っている。

私を弾くのは40歳過ぎの男。

軽いタッチで、流れるように私の上を行き来する指。

男女のおしゃべりと、食器が触れ合う音。

そこが、私の2番目のすみかだった。

朝の4時には、私一人になる。

神戸の風景を時折、暗闇の中で思い出す。

東京のジャズ・バー。

静寂な時間は一日にほとんどない。

ここでは生活が競争だ。



posted by ホーライ at 23:36| Comment(0) | TrackBack(0) | ロマンス | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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